創立40周年を迎えた明海大学歯学部は、これまで生涯研修システムや海外研修などを他大学に先駆け実施するなど日本の歯科界をリードしてきた。
転機にあると言われる現在の歯科医療をどのように捉え、どのように教育の方向を定めるか、安井利一学長に聞く。
ますます高まる歯科医療ニーズ
――人口が減り、将来、歯科医師が過剰になるのではないかと言われていますが、どのように思われますか。
安井 確かに子どもの数は減り、むし歯も減ってきましたが、逆に高齢者人口割合が増えており、歯科医師の新たな医療支援が不可欠になります。例えば、日本人の死因のトップ3はがん、心疾患、脳卒中ですが、次いで多いのが肺炎です。特に高齢者の場合、口の中の菌が肺に入って起こる誤嚥性肺炎が多く、口腔ケアが肺炎を防ぐ重要なポイントとなっています。
――人口構成の変化によって、疾病構造も変化しているということですね。
安井 歯科医療といえばむし歯治療というイメージが根強いですが、成人の約八割がかかっているといわれる歯周病の治療が、現在かなりのウェイトを占めるようになっています。また、噛み合わせや歯並びを改善する矯正治療、顎関節症治療、摂食リハビリテーション、口腔がんの治療、インプラント、ホワイトニングなど、歯科医療には多くの領域があります。歯科医療は、国民全体の医療に欠かせない存在であり、健康増進と生活の質の向上といった観点からも、今後ますますそのニーズは高まってくるものと考えます。
――歯科医の卒業後の収入はどの程度でしょうか?
安井 歯科開業医の年収は、高齢のため毎日診療しない歯科医師等を含めて平均で1,335万円となっています(中央社会保険医療協議会平成21年6月第17回医療経済実態調査より)。他業種と比較して、高年収であることは間違いありませんし、ワークライフバランスなど人生設計においても、たいへん魅力ある職業であると言えます。
――歯科医療の現場では、女性も活躍できるのでしょうか。
安井 近年、歯科医療の現場での女性の活躍は目覚しいものがあります。私立歯科大学・歯学部において女子学生の割合は約36%(平成21年度)となっており、年々増加する傾向にあります。
世界的にもこの傾向が見られ、北ヨーロッパ諸国では女性歯科医の占める割合が90%以上の国もあります。医科と比較しても診療時間を要する歯科医療は一般的に計画診療や予防診療形態がとられていますから、育児をしている女性にとっては特定の時間に診療できるメリットがあります。歯科医師の仕事は女性に適した職業と言えます。
学長 安井 利一
やすい としかず
1977年城西歯科大学(現明海大学)卒業、同大学院修了。歯学博士。専門分野は口腔衛生学。2008年より現職。日本口腔衛生学会副理事長、日本スポーツ歯科医学会理事長。著書に「スポーツ歯科入門ハンドブック」「歯と口の健康百科」など多数。

