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第1回講座|文部科学省委託 令和4年度明海大学との連携による専門人材育成・確保事業

第1回講座 5月24日(火) 15:20~16:20
新学習指導要領の原点

講師 吉田研作(上智大学名誉教授 日本英語検定協会会長)

概要

本講座では今回の学習指導要領が従来のものとどう違うのかについて説明します。なぜ、今回の学習指導要領が今までにないものになっているのかについてその理論的背景を考えながら、具体的な教育理念と学習、指導のあり方について見ていきます。現在はまだまだ「教室」という「金魚鉢」的な環境の中での英語教育が中心に議論されていますが、今後は、そこで学んだ英語をどのように活かすかについて考えなければならなくなるでしょう。現代のネット時代における「教室」の概念は従来のものとは変わってきています。そして、そのような新時代の教育環境に見合った英語教育は、まさに「大海」で英語が使えることを念頭に置いたものでなければなりません。本講座では、このような点について皆さんと一緒に考えています。

事前課題

平成20年の学習指導要領の中学校英語(小学校はまだ外国語活動しかないので)の目標と内容と、新学習指導要領の中学校英語の目標と内容を比べて、その違いについて考えてみてください。

講座資料

講座アーカイブ動画

事後課題

小学校学習指導要領の4技能5領域から一つ選び、配布資料の例を参考に34人のグループでできる具体的な言語活動とそこで用いられる言語材料を考えてみよう。

講座評価アンケートに寄せられた質問に対する回答

Q1
高学年になっても、まだ日本語もままならないというか、普段から大人が何か聞いても「うん」とか「ううん」くらいしか言わない児童がいます。(友達とは少しは話ができますが、いつも一人でいる感じです。)そんな児童にとって、高学年の外国語の授業は、発表やパフォーマンステスト等の場がどうしてもあるので、すごく苦痛なのではないかと感じながら指導をしているのですが、何かサポートする際の工夫や、心掛けたほうが良いことはありますか。あればぜひ教えていただきたいです。

A1
日本語でも自分の考えなどが十分言えない子どもさんの場合、パフォーマンスとしては、なかなか自分から英語で答えたりはできないと思いますが、先生がYes/No questionを使ったり、簡単な単語で答えられるように工夫してあげるなどして、できるだけ子どもがNegativeな気持ちで終わらないようにするのが大切だと思います。良くインタビューテストでWarm-up、テスト、Cool downという3つのPhaseを設けますが、Warm-up とCool downは必ず子どもが分かる内容にします。毎日授業でやっている How’s the weather? How are you? などではじめ、終わりは 褒めてあげる You did well. Very good. などをつかうのが良いでしょう。テストの結果いかんにかかわらず、子どもに何らかの「成功感」を味わわせることが大切だと思います。

Q2
先生が外国語話せなくても,外国語を教えられるのでしょうか。

A2
先生は絶対生徒より英語を知っていますので、自信を持って教えてください。以前、ある高校で、JTEとALTのteam teachingをやっていましたが、JTEは勿論留学したこともなければ、日常的に英語を使っている環境にはいませんでしたが、授業で間違いをおそれることなく頑張って英語で授業をしておられました。ALTはカッコよいアメリカ人の先生で、話が非常にうまい方でした。しかし、授業が終わってから私が生徒たちに、「みんな誰のように英語が使えるようになりたいのかな」と聞いたら、ほぼ全員がJTEの名前をあげました。また、ある小学校でも、自分の担任が一所懸命英語の授業をやっているのを見て、授業が終わってからある生徒がALTではなく、担任の先生のところに行って「先生カッコいいね。先生みたいに英語ができるようになりたいな」と言っているのを聞いて胸が熱くなった記憶があります。生徒は日本人の先生がネイティブのように英語が使えることを期待しているわけではありません。先生が頑張って英語でALT等をコミュニケーションしている姿を見てカッコ良いと思うのです。

Q3
デジタル教科書を参考に進めています。やり取りは多少楽しくできるのですが教科書の内容になると児童の様子が沈んでしまいます。私自身が具体的にどのような内容を児童に身につけさせれば良いのか。そのためにはどのような言語活動があるのか、どのような教育技術があるのか、わかっていないので今後実践例も交えながらお教えいただけるとありがたく思います。

A3
先日の講座の中でお話ししましたように、「目標」が目指す能力ですし、そのためにやるべきことは「言語活動のCan-do」により詳しく説明されていますので、それを見て児童の関心等に合わせて具体的な教室での言語活動を考えてください。しかし、一人で考えるのではなく、低学年担当者グループ、中学年担当者グループ、高学年担当者グループで一緒に考えるようにしてください。なお、教員研修の最も基本は先生たち同士が授業観察をしあい、協議をすることです。外から誰かに指導を受ける以前にまずは、内部でしっかり授業の相互観察を通して協議をしっかりしてください。

Q4
毎授業ではなくとも算数のように習熟度別(理解度別?コース別?)学習を実践している例はあるのでしょうか。

A4
小学校で習熟度別学習があるとすれば、私立でしょう。しかし、Scaffoldingの話をした時にも触れましたが、できる児童と苦労している児童が一緒に組むことで苦労している児童も成功体験をすることができることがあります。また、個人的には義務教育段階では習熟度別編成は反対です。この時期は協同学習の経験の方がずっと大切だと思っています。

Q5
研作先生から、recastをしながら子どもに気づかせることが大切という内容を伺いましたが、自分自身子どもに気づかせるために英語で伝える場面を多くしようと思うのですが、理解できていない児童の顔を見ると日本語で説明して理解させたくなってしまいます。長期的に見ると、どのように指導支援していくべきでしょうか。

A5
日本語を使ってはいけないということは全くありません。Translanguagingという考え方がバイリンガル教育の中にありますが、最終目標が「内容」を理解することであるなら、何語を使っても、また、ミックスしても内容が分かれば構わないということです。しかし、「言語」を教えることが目的の場合は、できるだけその言語で子どもが理解できるように努力をし、その上で必要とあらば母語を使って説明する、ということでしょう。日本語を禁止することは必要ありませんが、日本語に変わった途端に、あとがすべて日本語になってしまうことがありますので、必ず英語に戻ることを忘れないでください。