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第4回講座|文部科学省委託 令和4年度明海大学との連携による専門人材育成・確保事業

第4回講座 7月28日(木) 14:50~16:00
「読むこと」「書くこと」の指導

講師 池田周(小学校英語教育学会愛知支部長、愛知県立大学教授)

概要

小学校「外国語」では、「読むこと」の領域の目標イとして「音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現の意味が分かるようにする」が設定されています。この目標に向けた指導について、小学校学習指導要領(平成29年告示)外国語・外国語活動編には、「児童の学習の段階に応じて,語の中で用いられる場合の文字が示す音の読み方を指導することとする。その際,中学校で発音と綴りとを関連付けて指導することに留意し,小学校では音声と文字とを関連付ける指導に留めることに留意する必要がある。」と述べられています (p. 78)。本講座では、この指導の目指すところは何か、また、どのような理論に基づくものかの理解を目標とするとともに、そこから発展させた「読むこと」と「書くこと」の領域の指導における支援や工夫のあり方について具体的に考えていきます。

事前課題

文部科学省 MEXT Channel より、以下の動画を視聴してください。

★ 以下の動画をご覧になったことがない方は、こちらも視聴してください。
MEIKAI-JOEプラス2021 第2回講座「事前課題」と重複しています。)

[なるほど!小学校外国語②] 読むこと 書くこと(YouTube)>

4_課題2.png

《動画視聴の際の参考資料》
「小学校外国語・外国語活動研修ガイドブック」文部科学省 >

◆授業研究の視点3 「読むこと」の活動 pp. 81-82
◆授業研究の視点4 「書くこと」の活動 pp. 82-83

5_課題3.png

講座資料

講座アーカイブ動画

事後課題

講座内容を基に、各校で使用する検定教科書で「読むこと」の領域の目標イが、どのような活動として扱われているかを確認してみましょう。また、その指導においてどのような支援や工夫を行うことができるか、同僚と話し合ってみましょう。

講座評価アンケートに寄せられた質問に対する回答

Q1

「読むこと」「書くこと」の領域でのICTの活用場面について、具体例などありましたら教えていただきたいです。

A1

「読むこと」「書くこと」の領域の指導におけるICTの活用については、文部科学省から出された以下の資料があります。

外国語の指導における ICTの活用について - 文部科学省

https://www.mext.go.jp/content/20200911-mxt_jogai01-000009772_13.pdf

概して、「読むこと」と「書くこと」の領域でのICT活用については、まだまだ事例が少ないように感じています。今後、小学校段階でのこれらの領域の指導で育成を目指す知識・技能がより具体的に議論されていくことが必要ですが、そうすれば実際の指導においてICTを活用できる場面がさらに分かりやすくなると考えます。

現段階では、(1) 児童が書いた(書き写した)ものがポートフォリオとして残る、(2) 書いた(書き写した)ものを読む(音声化する)活動につなぐことができる、(3) 児童が「自分の伝えたいこと」を書いたり(書き写したり)、どのように表現できるかを調べて発音を確認して言う、あるいは (4) 一人一人の児童に必要な文字言語に係る支援(文字の形を様々な大きさで確認できるなど)を提供できる、といったことをICT活用の意義と考えることができます。それを踏まえれば、上記それぞれに対応して、(1) 文字を用いて伝える言語活動で、実際に仕上げたカードや自分の時間割や宝物などの記録を蓄積して振り返り、自己評価とさらなる目標設定に発展させる、(2) 何度も言ったり聞いたりした表現を自分で書き写したのだから発音できるという自信につながる活動(授業時間内に書き写したものを友だちに見せながら発音して音声で伝える、または書き写したものを交換して発音しあってみる活動など)を組み込む、(3) 手紙の一部やメモなど「書いて伝える」場面を設定し、調べ学習を通して、未習でも自分が表したいことを自分の力で書き写す経験を積み、学びの達成感につなげる、さらに (4) 授業外の学びで、児童が文字言語への関心を高められるような「個別最適な学び」を実現できるような支援をICTを通じて共有しておく〔環境設定〕、などを試みることができそうです。

Q2

ワ-クシ-トの活用がたくさん必要ですか?

A2

「読むこと」、「書くこと」においてワークシートを活用する場面としては、音声で十分に慣れ親しんだ語句や表現を書き写したり、それを音読して伝え合ったりする活動などが考えられます。1つのワークシートに協働的に取り組むものを除き、ワークシートを用いると、児童が個別に取り組む時間が増えます。ワークシートの量を増やすのではなく、それを用いた活動を質的に向上させることで、活用と位置づけることが大切です。

 すなわち、書き写す活動でワークシートを用いる際にも、書かせっぱなしにせず、書いたものをどうするかまで活動のねらいを設定しておきます。書くという行為は、文字言語を用いて誰か(相手)に伝える、誰か(相手)が伝えたいことを理解するためのものですから、書き写したものを相互に読み合ったり(音読してみたり、内容を理解したり)する時間も、同じ授業に組み込んでおくようにしましょう。「何のために書くのか(このワークシートに取り組むのか)」が常に先生と児童とで共有され、理解されていることが大切です。

Q3

繰り返しの質問になってしまうかもしれませんが、フォニックス導入の適切な時期はどの段階ととらえればいいのか、再度教えていだければありがたいです。

Q4

フォニックスが音韻認識につながることが分かりました。小学校では、いつの段階でフォニックスをスタートさせると良いものなのでしょうか。例えば、「アルファベットに慣れ親しむ3年生の後、大文字小文字を学習した後の高学年など」です。

Q5

小学校外国語でフォニックスは必要ないとおっしゃる方もいますが、フォニックスを行う場合、毎時間の学習の中でどのように行っていけばよいか。

A3・A4・A5
(ご一緒にご回答いたします。)

フォニックスとは、「文字とそれが表す音との対応を知識として覚えさせることにより、語を発音したり綴ったりできるようにする」指導法のことです。講座の中でもお伝えしましたように、英語圏の国々では、母語習得において音声言語がある程度発達した段階(聞いたり話したりする能力が高まった段階)で、就学時児童に向けて、リテラシー(読み書き技能)獲得の失敗を防ぐために一斉指導が推奨されることが多いです。

これを日本の英語教育に当てはめて、フォニックスを英語圏の子どもと同様に英語学習の早い段階で導入する考え方もあるようです。日本で英語を学んだ多くの大人が、自身の英語学習において「単語が発音できなかったから英語が苦手だった」、「単語の綴りが覚えられなかった」と振り返ることから、フォニックスを早めに取り入れればそうした苦労を軽減できるという理由付けも伺います。実際に、小学校低学年からフォニックスのルールを教えると、児童の中にはそのルールを活用して、例えば「/d/ /o/ /g/ dog」のように音の足し算(blending:混成)をして、これまで聞いたことのない語であっても発音できるようになる事例が報告されています。

しかし、英語の綴りと発音の関係は、dogに見られるように単純なものばかりではありませんので、せっかく覚えたルールでは発音できない、綴れない語にもいずれ出合います。また、ルールを覚えるという暗記の要素を含む学びを小学校段階で中心にするのは、音声を聞き取る能力が優れている児童の学習特性を生かしていないことになります。さらに講座でご紹介した音韻認識がその後の読み書き技能獲得を促進するという研究結果から考えても、「まずは音声言語を通して、読み書き技能獲得に必要な能力を高める」指導を十分に行っておくことが必要です。簡単に言えば、英語圏の就学時児童ほどの「音声言語が十分に発達した段階」で、音と文字の対応について芽生え始めた児童自身の仮説を検証するようにフォニックスを導入できれば効果的ではないかと私は考えています。単にアルファベットを識別できて書けるから、フォニックスも導入可能というのではなく、児童自身が小さな音を認識できるようになり「あ、この音はこういう記号(文字)で表されるんだ!」と気づき始めた時が、フォニックスを取り入れる時期です。

その一方で、日本の学校教育で英語を学ぶ児童の場合、第3学年の国語科でローマ字綴りを学び、外国語活動でアルファベットの名称の発音に親しみ、形を識別するようになりますので、少なくともこれらの段階で音と文字の対応に気づき始めていると推察されます。これらを鑑みながら、フォニックスの扱いについて今後もじっくりと検討していく必要があると考えています。現行の小学校学習指導要領は、フォニックスを体系的に一斉導入する形の指導は求めておらず、発音と綴りの関係は中学校での学習内容となっています。小学校では、音声言語が語や音節、音素などの単位で小さく区切れることの理解や、音素を混成する技能の指導、日本語にはない英語の子音に慣れ親しむことなど、音声のみでしっかりと指導しておかねばならないことが多くあります。まずはそれらを大切にした上で、児童が何度も音声で慣れ親しんだ語のうち「はじめの音」を共有するものについて、その音が特定の文字で表されることを少しずつ提示していくのはいかがでしょうか。機械的に知識としてフォニックスのルールを網羅的に指導するのではなく、児童が慣れ親しんだ音だからこそ、それを表す文字と対応させて、書かれた語句や文を見る際に意識を促すということです。現在の小学校英語教育の指導体制と内容を踏まえると、こうした指導も高学年くらいで行うのが適切と考えています。

Q6

音韻認識が重要であることは理解しています。子どもたちの母音挿入が気になっているのも正直なところです。本日の講義から,オンセット・ライム区切りが母音挿入を減らせる指導だと感じました。しかし,実際のところその指導になかなか時間をさけていないのが現状です。授業の冒頭などで短時間で効果的に行える指導の工夫があれば教えてください。

A6

講座の中で実際にご説明いたしましたように、絵が表す語に含まれる音の数を□で示した絵カード(Elkonin card)を用いて、語を音素単位に区切る活動や、オンセット・ライムの区切りで発音する活動、さらに複数の語の中で共通する音とその位置を理解する活動などを短時間で繰り返してみてはいかがでしょうか。

Q7

最後のまとめの読むこと、書くことをメールか何かでいただけませんか。

A7

当日投影いたしました資料は、講座ページよりダウンロードいただけます。講座修了後に、それまでのものと差替えをお願いしました。ご参照いただけましたら幸いです。

Q8

「読むこと」「書くこと」の技能を高めるための支援の他の例ももしあれば教えていただきたいです。

A8

 「読むこと」と「書くこと」の技能を高めるためにも、「聞くこと」、「話すこと」の指導が大切です。まずは音声言語に十分に慣れ親しむように、語句や表現に繰り返し触れ、実際に発話しながら意味のやり取りを行う言語活動をたくさん取り入れてください。

 その上で、「読むこと」においては児童がしっかりと語のそれぞれの文字を目で追いながら発音しているか、「書くこと」においては一つ一つの文字をどのように書き写しているか(文字がまとまりとなって、ある意味を表すことを意識しながら書き写しているかなど)を指導者がしっかりと見取り、確認することが重要な支援だと考えています。読む目的、書く目的をしっかりと児童と共有しながら、スモールステップでの学習到達目標を設定し、少しずつ丁寧に文字を扱う活動に取り組む。こうした授業設計も支援のひとつです。