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第14回講座|文部科学省委託 令和5年度明海大学との連携による専門人材育成・確保事業

第14回講座 授業研究講座全体を通して見えてくる課題と成果 
9月12日(火)15:20~16:20

講師 吉田研作(上智大学名誉教授 日本英語検定協会会長)

概要
テーマ

各校の授業実践を振り返って

講師

吉田研作(上智大学名誉教授 日本英語検定協会会長)

概要

各校の授業及びその後のディスカッション、また、講師の先生方のお話を通して、この講座の成果が随所に現れていて、感心しました。全体を通して外国語活動、外国語、そして小中連携、JTEお一人の授業からALTとのティーム・ティーチングまで、小学校英語でみられるほぼ全ての形態が実現されていました。全体としては非常に良い授業ばかりだと思いますが、いくつか気になった点について今回の講義でお話しさせていただきます。

1)スモール・トークについて。本授業で扱われる表現や言語形式にどれだけ限定するべきものなのか。本時の「めあて」の前が良いのか後が良いのか。
2)文法(例えば、3人称単数のの-sはどこまで実用なのか(生徒へのインプットと生徒のアウトプットの関係)
3)日本語がどこまで必要なのか(生徒自らの「気づき」の機会を奪ってしまっていないか)
4)小中連携は何を共有することなのか(内容、単語、構文、それとも教授法)
5)recast repetition, requesting, confirmation等の関係
6)中間評価の役割及び振り返りなどについて

事前課題

下記のようなポイントからもう一度各校の授業を見直してみること、また、事後課題は、講義の後、もう一度各校の授業を見直してみること

1)スモール・トークについて。本授業で扱われる表現や言語形式にどれだけ限定するべきものなのか。本時の「めあて」の前が良いのか後が良いのか。

2)文法(例えば、3人称単数のの-sはどこまで実用なのか(生徒へのインプットと生徒のアウトプットの関係)

3)日本語がどこまで必要なのか(生徒自らの「気づき」の機会を奪ってしまっていないか)

4)小中連携は何を共有することなのか(内容、単語、構文、それとも教授法)

5)recast repetition, requesting, confirmation等の関係

6)中間評価の役割及び振り返りなどについて

講座資料

講座アーカイブ動画

講座評価アンケートに寄せられた質問に対する回答

講師への質問

Q1

スモールトークの代わりに毎時間歌を歌っています。デジタル教材についているチャンツです。それでもスモールトークのように導入になりますか?

A1

もちろんなります。児童がこれから英語を勉強するのだという気持ちになることが大切です。もう一点、歌やチャンツが良いのは、声出しの練習になることです。一度声を出しておけば、その後の活動でも声が出やすくなると思います。

Q2

授業者に、英語に苦手意識があるとき、どのようにすれば良いかアドバイスをいただきたいです。

A2

児童が英語が苦手だと言ってきたとき、先生はなんとおっしゃいますか?多分、間違えても大丈夫だから楽しんで英語を使ってみよう、のような形で励まされるのではないでしょうか。もしそうなら、その同じ励ましのことばを自分に言ってあげてください。

Q3

話すことから書くことへの円滑な接続についてどうしたらよいかお聞きしたいです。

A3

学習指導要領では、各活動は音声で慣れ親しんだ英語を見て文字で認識し(リーディング)、認識した文字を「書き写す」ように言っています。一番良いのは音声での認識、認識したものを文字で確認し、文字で確認したものを書き写す、というプロセスでしょう。小学校ではスぺリングテストなどはしませんので、書き写す機会を十分確保できればそれで良いと思います。

Q4

いわゆる「課題」と「まとめ」の「まとめ」のあり方について伺いたいです。様々な方の指導案を拝見しましたが、本時の課題(というよりも目標なのでしょうか)はわかりますが、いわゆる他教科でもある「まとめ」は見つけられませんでした。必要ないのでしょうか?

A4

先生は授業の最初に「めあて(課題)」を提示し、それを本時でできるように授業を組み立てるでしょう。最後は先生の「まとめ」があっても構いませんが、それより大切なのは、児童が最初に提示された「めあて」ができるようになったか、という「振り返り」です。振り返りで今日のめあてだった「~ができるようになる」という目標をどこまで達成できたかを児童自身に問う。例えば、「できるようになった」「大体できるようになった」「まあまあできるようになった」「あまりできるようにならなかった」で答えてもらうと同時に授業に対する児童の感想等を書いてもらうので良いと思います。

Q5

吉田先生はCLILについて、小学校での授業に取り入れる事は、どうお考えでしょうか?12月に6年生対象の、社会科からのアイヌの題材で、CLIL風の研究授業をするのですが、事前の協議で市の研究会の方に、難し過ぎる、6年生はアイヌに興味もたない、等々否定的なご意見をいただきました。心が折れそうです。何かアドバイスがあれば、教えて下さい。よろしくお願いします。

A5

6年生がアイヌに興味を持つかどうかは、英語以前の問題ですので、まず、日本語でアイヌについて児童がどれだけ知っていてどう思っているかについて聞くことが大切だと思います。色々な音声、視覚資料(かたりべの話や音楽、踊りなど)を用いて、アイヌがどのような人たちで、どのような生活をし、現在どうなっているのかなどについて児童の興味を向けることが必要のように思います。例えば、昔は口頭でのみ伝承されていたアイヌ文化を、有名な言語学者金田一京介の指導の下、『アイヌ神話集』にまとめ、わずか19歳で亡くなった知里幸恵さんの話などは心に響くものがあるかもしれません。

英語でやったら難しいかどうかは、児童がそのテーマについて前提知識をどれだけもっているか、興味をもっているかにかかわってきます。また、アイヌ文化に関する語彙を英語でなんというか(CLILの前に日本語でアイヌの話をするときでてきた重要な語彙の英語化)など色々準備する必要があるでしょう。

昔、私たちの研究会で、高校の英語の教科書に載っていたMartin Luther King jr. の有名な平和のスピーチ(原文)と同じく有名な Mother Theresaの様々な偉業について新聞記者が書いた記事のどっちが分かりやすく、面白かったかを高校生に聞いたみたことがあります。King牧師のスピーチは原文のままでしたので、英語としては難しく、凝った表現等も多くありました。それに対してMother Theresaについて書かれた記事は分かりやすく易しい英語で書かれていました。しかし、生徒へのアンケートの結果、King牧師のスピーチの方が人気がありました。つまり、英語の難しさよりも、King牧師についての前提知識と興味が英語の理解にも反映したのだと言えるでしょう。

ということで、まずは、児童が興味をどこまで持ってくれるかがこの場合は一番大切ではないでしょうか。