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第2回講座|文部科学省委託 令和3年度教員養成機関等との連携による専門人材育成・確保事業

第2回講座 読むこと、書くことの指導

8月2日(月) 9:30~10:40

小学校英語教育学会愛知支部理事

愛知県立大学

教授 池田周

概要

本講座では、小学校「外国語活動」「外国語」を通して育成を目指す文字に関する技能、および「読むこと」「書くこと」の資質・能力の理解を構築し、それらの指導のポイントを学んでいきます。特に、文字や「読むこと」「書くこと」の領域において、「何を」「どのように」「どこまで」指導するのかについて、具体的なイメージをもっていただけことを目指します。さらにその評価のあり方についても、現状の課題を含めてお話しします。講師によるポイント整理と解説だけでなく、受講者同士の意見交換、実践・課題共有も行いながら進めていきます。

事前課題

事前課題 (1)

「小学校外国語・外国語活動研修ガイドブック」(文部科学省)のうち、以下2つのセクションを熟読しておいてください。

◆実践編の中にある、授業研究の視点3 「読むこと」の活動 pp.80-81
◆実践編の中にある、授業研究の視点4 「書くこと」の活動 pp.82-83

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事前課題 (2)

文部科学省 MEXT Channel のうち以下2つの動画を視聴しておいてください。

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小学校の外国語教育はこう変わる!④

〜言語活動の進め方及び、読むこと・書くことの指導のあり方〜

講座資料

講座アーカイブ動画

事後課題

講座内容を基に、各校で使用する検定教科書の「文字に関する事項」および「読むこと」「書くこと」のタスクを1つ取り上げ、その学習到達目標と指導における留意点、評価の観点と方法について、同僚と話し合ってみましょう。

講座評価アンケートに寄せられた質問に対する回答

【質問1】
英語を読めるようにするという教師側の目的で、ジングルを機械的に扱っているなと感じる時があります。ジングルを教える際の児童の気づきを引き出す指導法があったら教えてください。ちなみに私は機械的に扱うのがいやなのでジングルにおもしろおかしくメロディがつけられている歌(”fun with phonics”)を、歌として子どもたちに聴かせています。子どもたちが勝手にまねするようになるのでおもしろいですが、この活動はどうでしょうか。

【回答1】
ご質問ありがとうございます。歌やチャンツ、ジングルなどは、児童の興味をひきつけますし、何度も聞くことによって「真似して」言えるようになる力にはいつも驚かされます。文字の「音」(sound)を扱うときに最も重要なのは、「個々の音を正確に聞き分けたり、言ったり(発音したり)しているか」だと感じています。すなわち、「/p/ の音を出すときには、喉に指先を当てても震えを感じない」、「/s/ の音のときには指先に震えを感じるし、/p/ とは違って伸ばすことができる」、「/m/ の音のときには喉に当てた指先に振動を感じるし、この音は長く伸ばすことができる」のような音の特徴に気づいていることが大切です。日本語を母語とする児童は、特に、「個々の子音を聞いても、その音の後ろに母音の音を伴ってしまう(母音挿入)」現象が起こることは講座内でも触れましたが、せっかくですので、現在ご実践されているような歌を導入される際には、児童が歌いながら出している「音」が、どのようになっているか、しっかり観察し、日本語との音の違いを含めて「気づきを促して」あげてください。母音挿入が起こったままで歌を真似ても、それはフォニックスがうまく行われているとは言えません。
また、「文字を見て、その文字が表す音を知識として覚える」ことができれば語が読める、というのは「文字から音へ」のアプローチです。小学校外国語では、「音から文字へ」の方向性のアプローチを目指していることも大切にしていただきたい点です。すなわち、「語を構成する音を小さな単位(音素の単位)に区切ることができて、その個々の音を表す文字がある」ということに気づかせる方法です。ジングルを通して児童の「音」への気づきを高める方法としては、次の方法を試してみてください。たとえば「/m/, /m/, milk」というジングルであれば、最後のmilkを/m/ と /ilk/ の部分に分割して(オンセット・ライムの区切り)児童に聞かせたり、一緒に言ってみたりすることです。そのうち「/m/ と /ilk/ を合わせるとmilk」、「/m/ と /at/ を合わせるとmat」といった「音の混成」の活動へとつなげることができます。お気づきの通り、この段階では文字を全く扱っていません。耳で聞いた音を混成したり、一部を削除したり、自在に操作できるようになって初めて、「音から文字へ」対応させる段階となります。

【質問2】
読むことではなく、話すこと「発表」の内容になってしまうかもしれませんが、ご了承ください。講座の中で、「書いたものを読ませるのは、4技能の中の[話すこと]にはならない」というようなお話があったと思います。自身のこれまでの授業の中でも、話すこと[発表]のパフォーマンステスト等の時に、自分が話す英語を書いた原稿を用意したいという児童の訴えがありました。私は、パフォーマンステスト時に、「児童が原稿を読む」という行動にならないように、原稿を見て練習してもいいが、本番では見ないという約束を児童に伝えました。原稿は用意しない、キーワードのみメモを許可する、英語ではなく日本語のメモのみ許可する等、他にも方法は様々あると思います。以上のようなことを踏まえ、話すこと[発表]の文字の取り扱いに関して、先生の考えを教えていただきたいと思います。

【回答2】
ご質問ありがとうございます。「話すこと[発表]」の領域の活動において、どうしてもメモを読んでしまう児童が多くいるようです。確かに、例えば「(自分の好きなもの、できること、やってみたいことなどを含めて)自己紹介しましょう」という活動において、すべての内容を覚えて発表するのは、母語である日本語でも難しいことがあります。どうしても児童は「言わなくてはいけないことをすべて話そう」と頑張ってしまうからです。言うべき内容が指定されている場合などは、特にそうなってしまいます。対応としては、既に先生が記されているものが一般的だと思います。「文字を頼りにする」児童はいますし、それが決して悪いことではありません。ただ「話すこと[発表]」は「読むこと」の一側面である「音読」とは違うということを、指導者としても意識していきたいと思っています。
中でも私は、次のような対応をしたりしています。

①英文原稿をメモしている場合は、発表時にメモ原稿の助けを借りるとしても、Read and Look Upとするように伝える(メモ原稿を見ても良いが、話す時は聞き手を見る)
⇒ 自分が書き写した英文、何度も音声で慣れ親しんだ英文だからこそ、メモ原稿を見て読むことができる(音読できる)という良さもあると感じています。ただし、「発表」という活動としては、メモを見ながら話すのは「発表の仕方」の観点から望ましくないため、ルーブリックなどの評価の観点に含めて、児童自身が「メモではなく聞き手を見て」話すことを意識するようにさせたいと思います。

②メモを日本語で、「どのような内容か」の手掛かりのみとする。
⇒こちらも実際に発表の場面ではRead and Look Upを意識させることが必要ですが、英文そのままをメモしていないので、ずっとメモを見ながら話すという状態にはなりにくいです。例えば上の自己紹介の例であれば、「あいさつ、名前、好きな食べ物、得意なスポーツ、行きたい国・・・」といったメモのみを持ち、それぞれについて発表中に助けが欲しくなれば参照する、という扱いとします。この対応を機能させるには、児童がその発表の言語活動において使える語句や表現について、それまでの授業で十分に聞いたり言ったりしておくことが必要です。

【質問3】
書く学習は、6年生でもローマ字表記で単語を書く児童が見受けられます。ここに指導をしていますが、どのような指導が必要でしょうか。

【回答3】
ご質問ありがとうございます。「ローマ字表記で単語を書く」というのは、小学校外国語の「書くこと」の学習内容である「書き写し」の活動内で・・・ということでしょうか。小学校ではあくまでも「綴りを見ながら書き写す」段階までを扱いますので、もし「子音字後に母音字を補う」事例がありましたら、「もう一度よく(手本の綴りと)見比べてみよう」とか、「(手本の綴りと)文字の数を比べてみよう」という声かけをして、どこが違うかを児童自身に気づかせてみるのはどうでしょうか。もし、児童自身で「綴りを思い出しながら」単語を書いたり、聞いた発音をアルファベットで書き取ろうとしたりするときにローマ字表記となったりするのであれば、まずその活動は児童にとっては非常に高いレベルのものであることを理解して、導入に適切なタイミングであるかを確認する必要がありそうです。
★ご質問の状況を私がきちんと把握できていないかもしれません。また詳細お聞かせください。

【質問4】
書くことについてですが、タブレット端末が導入され、児童が進んで単語を調べてユニットのまとめカードに記入します。その際、間違った単語や日本語から英語訳した文章をそのまままとめカードに記入していることがあります。私自身に単語や文章が正しいかどうかの判断能力があればよいのですが、そこまでの力がないため、間違えたままカードを終了していることがありました。このようなことを回避するために、このようなことにならないようにするために、教師側と児童側双方が注意することがあれば教えてください。また、タブレットを活用して、ユニットにまとめカードを作成しています。活字(大文字、小文字のアルファベット)は手書きでなければならないでしょうか。下書きで、活字を鉛筆で書いているので、清書はきれいに仕上げるためにタブレット上のフォントにしたいと思っているのですが、それは良くないことでしょうか。

【回答4】
ご質問ありがとうございます。先生のご心配とご懸念、よく分かります。間違ったままの状態でカードを終了してしまえば、それが後まで残ってしまいます。その後、児童がそのカードを再び見て、間違ったものが定着してしまうかもしれないと確かに心配になります。小学校外国語では「書くこと」の領域が「書き写し」までの活動であることを踏まえれば、そもそも「ユニットのまとめカードを作成する」ために「(単語や文などの)文字を書き写す」ことも、まだ学習途中の内容と捉えることができます。児童には「書き写したものを、元のものとよく見比べて、抜けた文字や余計な文字が入っていないか、順番が入れ替わっていないかを確認する」ことを促してください。教師としては、クラス全員のカードを授業時間内にすべて確認するのは難しいと思われますので、通常の「見取り」と同様、複数回の授業でクラス全員のカードを確認して、間違いがあれば気づかせてあげる手立てを講じていくのはいかがでしょうか。
また、清書としてタブレット上のフォントを使わせることについては、必ずしも「良くないこと」とは思いません。確かに効率的ではあると考えますが、「書くこと」の領域の目標には「書き写す」、すなわち「自分で書く」ことが含まれていますので、やはり児童自身に書くという動作を行って欲しいです。タブレット上に書くのは、大人でも綺麗に書けなくて苦労します。タブレット活用で、ふり返りや書き写しの活動をタブレット上に書かせて行う授業実践も時々拝見しますが、やはり児童も書きづらそうです。私は、鉛筆で紙の上に清書したものを撮影し、それをポートフォリオとしてタブレットに記録・保存していく形でもよいのではないかと考えています。

【質問5】
フォニックスを何のために学習するのかをわかりやすく子どもに伝える具体的な指導について教えてください。

【回答5】
ご質問ありがとうございます。講座の中でもお話しましたが、フォニックスは、(音と文字の対応が複雑な)英語を母語とする国で、一定レベルの音声言語(聞く、話す)を習得した子どもが、文字言語(読む、書く)の習得に失敗しないようにするために開発された「指導法」です。ですので、フォニックスの意義を理解するためには、英語の音声言語が一定レベル発達している状態でなければ難しいということになります。英語圏でフォニックスが導入されるのが就学直前、もしくは就学直後ですので、日本の小学生の場合、小学校入学時くらいの日本語レベルに相当する英語の音声言語が発達しているイメージです。さらに、今まで「音の流れ」のように聞こえてきた英語が、実は「文」や「単語」の単位に区切れることが分かり、さらに単語が「さらに小さい個々の音(音素)」に区切れるのだということが意識されることが必要です。「小さい一つ一つの音」それぞれを表す文字があるのだ!と気づき、それがさらに、基本的な「文字の音」を混成させて語を発音する経験につながれば、自ずとフォニックスを学ぶ意義を感じられるようになります。ただ、小学校段階で、学校教育において、すべての児童にその意義を感じさせる指導を行うには、まだ授業時数や指導体制などの環境が整っていないように感じています。 だからこそ、フォニックス導入前に「音韻認識」を高める指導を行ってください。音韻認識は、文字とは関係なく、語を構成する音を様々な単位で取り出したり、区切ったり、混成させたり、入れ換えたりすることができる技能を表します。その手始めが、「語のはじめの音」に気づく、すなわち、「語のはじめの音」だけを取り出したり、入れ換えたり、同じ音を認識したりする活動です。フォニックスという「指導法」を日本の小学校英語教育にどのように取り入れるかは、中学校英語教育との接続も含め、今後も継続的な議論が必要だと考えています。